病院業界に転職して感じたカルチャーショック
まず最初に、導入の経緯をお伺いできますでしょうか
後藤さま:導入の経緯を説明する前に、私の経歴からお話しさせていただければと思います。
もともと私は、2019年4月に製薬会社の営業職から今の医療法人に転職してきて、グループ病院である海老名総合病院の地域連携課に異動したのが2020年4月です。
私は社会福祉士などの医療系資格を持っていません。地域連携の業務に関しては素人同然だったので、はじめに転院調整業務のレクチャーを受けたのですが、その時に「電話とFAX」でのやりとりの多さに衝撃を受けました。
正直、最初は「FAXってどうやって送るんだ!?」と思ったほどです(笑)
でも病院では当たり前のように毎日何十通もFAXをやりとりしてるし、PHSもしょっちゅう鳴るし。
前職では、メールやチャットでのやり取りが一般的でしたし、電話もそこまで使う頻度は多くなかったのでカルチャーショックを受けたことを覚えています。
業務内容はもちろんですが、やり取りの方法についても驚きの連続だったんですね
後藤さま:そうですね。もちろん、電話やFAXの良さや、医療業界では使い慣れているという側面もあると思うのですが、マネジャーの立場でいると、定期的に電話やFAXでの些細なミスの報告が上がってきました。
そういった人為的な細かなミスなどが業務量を増やしていくひとつの要因なのではないかと感じていました。
そういったリスクや非効率な側面を考えると、電話やFAX中心の連絡方法は変えていったほうがいいんじゃないかなというのが、最初来た時に抱いた率直な思いでした。
ただ、連携業務が少しづつ分かるようになってくると、これは医療業界全体の問題であって、一つの病院でどうこうできる問題ではないんだなということも同時に分かってきました。
そのようなタイミングで新型コロナの流行が起こって、医療業界も今までと同じ働き方では回っていかないというのは皆さん共通認識として骨身に染みたのではないかと思います。
時代の変化や危機に対応していくためにはどうすればよいのかと考えた時に、やはりITツールの活用やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を実現していく必要があると思いました。
そんな時にCAREBOOKというサービスに出会って、これだ!と感じてお問い合わせさせていただいたのがスタートです。
一般企業から転職されたからこそ、医療業界で当たり前のようになっていることへの疑問や課題感が生まれたわけですね。
後藤さま:そうですね。自分もはじめから社会福祉士などとして病院で働いてたら当たり前になっていたかもしれませんが、一般企業から転職してきた身として第三者の視点から見た時に、他にも何かやりようがあるんじゃないと思いました。
グループ病院との転院調整を通じて感じたCAREBOOKの可能性
グループ病院の座間総合病院様との転院調整においても、何か課題をお持ちだったのでしょうか?
後藤さま:そうですね。もともと座間総合病院とは電子カルテを共有しているので、当然それを使えば患者さんの情報はやりとりができますが、電子カルテはあくまで診療録であって担当者間でのコミュニケーションツールでは無いので、意思疎通の面では不十分だと感じていました。
また病院機能の違いからくるコミュニケーションエラーですね。
海老名総合病院は高度急性期で、座間総合病院はケアミックス型なのですがそれぞれの転院調整のスピード感やソーシャルワーカーや入退院支援に求められる役割が違う。
そうするとどうしても理念やビジョンの違いから、コミュニケーションエラーが生じてしまうことがありました。そういう点も、CAREBOOKを使うことで自然にコミュニケーションが生まれてきて連携が強化できないかな、というのが最初の狙いでした。
なので正直最初は、CAREBOOKを使って業務効率化を図ろうというのはあまりなかったですね。
それよりは「このツールを使って働き方を変えてみませんか?」というところから両病院間のソーシャルワーカーや地域連携課のマインドを変えていくことで、よりスムースな連携やコミュニケーションを実現させたいというのが狙いでした。
なるほど、電子カルテで情報が共有されていてもうまく連携やコミュニケーションが取れるわけではなかったんですね。
後藤さま:はい。グループ病院や物理的に距離が近い施設であったとしても、転院調整でのコミュニケーションというのは難しいなと感じました。
その改善のきっかけのひとつにCAREBOOKがなるといいなと思いました。
最初、座間総合病院様のみとやりとりするという形でCAREBOOKを導入していただきましたが、一対一の連携に限定した導入というのは弊社としても初めてでした。
そこでお聞きしたいのですが、一対一でのやりとりにおいてCAREBOOKの使い勝手というのはいかがでしたか?
後藤さま:そうですね、やはり劇的に業務自体が効率化したというよりは、導入の狙いでもあったコミュニケーションがよくなったかなと思います。
電子カルテは医師や看護師などいろんな人が記入するのでありとあらゆる情報が記載されているのですが、その中で転院調整に必要な情報を探すのはなかなか大変です。
カルテに入っていない情報も必要だったりするので、そういったところをCAREBOOKで補完しています。
その中でCAREBOOKを通じて病院間のコミュニケーションが生まれていて、それが今まで以上にスムーズな転院調整につながっているのではないかと思います。
また、電話をかけても担当者に繋がらないということはグループ病院であってもありますが、チャットで送れば時間の融通がききますし、文字で記録として残るので細かい伝達ミスや食い違いが防げて非常に助かっています。
またマネジャーの立場としては、労務管理の観点からどのスタッフがどういう案件をどれだけ抱えてるかというのが今まで見えにくい部分でした。
CAREBOOKを使うことで、抱えている案件の量や進捗状況が分かるのでその点もCAREBOOKのすごくいいところだと思います。
導入を決められた際に、現場の方から不安や反対の声などはございましたか?
後藤さま:最初は、電話やFAXで十分やれているし電子カルテも共有しているのになぜわざわざCAREBOOKを使う必要があるのかということは感じていたと思います。
でもそこは私の方で、最終的な目的としては働き方そのものや、転院調整の在り方そのものを変えていって、この地域全体の医療連携の在り方を変えていきたいという事をミーティングの場などで説明させていただいて、なかば強引に導入を決めました。(笑)
その後の現場の方々の活用状況はいかがでしたか?
後藤さま:正直なところ、導入しても積極的には使ってもらえないかなと思っていました(笑)
でも、1人使い2人使い、と徐々にスタッフも慣れてくるにつれて、最近では「使いやすくするためにもっとこうしてもらえると助かる」という意見も出るようになりました。
現状では月に50件くらいをCAREBOOKを使って転院調整を行なっています。
これは案件全体の約4割をCAREBOOKを使って調整をしている計算になります。
正直ここまで使ってもらえるとは私も思っていなかったのですが、ツール自体の使い勝手の良さであったり、現場にとってのメリットを多少なりとも感じているから使い続けてくれているのかなと思っています。
近隣で参加する病院さんが増えてきた現在は、グループ内だけでなく、近隣の医療機関への打診にもCAREBOOKを活用しています。
導入時期に大変だったことというのは何かありますでしょうか?
後藤さま:正直、導入に対してそこまでハードルはありませんでした。
一番は費用が抑えられているというのが大きいと思います。
どうしても病院は費用に対してシビアになると思いますが、設定されている費用に対して、メリットや期待される効果の大きさを考えた時に病院長からも「やってみたら」と受け入れていただきました。
病院としても医療介護連携のさらなる強化と生産性向上や業務効率化が急務であるという意識を持っているので、CAREBOOKの将来性を買ってくれたのかなと思います。
CAREBOOKを通じた次の医療連携へ
海老名総合病院様の中でCAREBOOKを使ってみての反響はいかがでしたでしょうか?
後藤さま:やはり若いスタッフほど、こういったITへの順応が早いですね。
今では座間総合病院以外ともCAREBOOKを使ってやりとりをしていますが、グループ病院以外の近隣医療機関への打診や、書類添付機能の利用などは若いスタッフが一番初めに積極的に利用しています。
また若い世代はネットやチャットなどに抵抗感が少なく適応力も高いため、このようなツールの方がコミュニケーションが取りやすいと感じているのかもしれませんね。
また電話とFAXに加えてCAREBOOKという連携手段の選択肢が増えたことで、スタッフの働き方の選択肢も増えたとも感じています。今までであれば、子どものお迎えが迫っていいるけど、電話が繋がるまでは院内に残っていないといけないというところを、まずチャットで連絡しておいて詳細は明日朝に電話しようといったことが出来るようになって業務の効率化や働きやすさにに繋がってきていると思うので、マネジメントしている立場としては非常に良かったと思ってます。
座間総合病院様以外にもCAREBOOKでの転院打診を広げるにあたって、広げるタイミングの難しさというのはあったのでしょうか?
後藤さま:海老名市周辺は、もともと医療資源が少なく転院調整などの病院間調整にそこまで困っているという状況ではありませんでした。そのため、このツールの有用性や必要性を近隣の病院さんに理解してもらうのは難しいかもしれないと最初は思っていました。
ただ、新型コロナの流行や医療関係者の働き方改革などによって医療連携の在り方を変えていくことが求められる時代になったと感じていたこともあり、病院間の連携はもっと活発にできればいいなと考えていました。
さらに当院が主軸になって周りを巻き込んでいくというスタイルを確立したいと思っています。
そのような考えのもと、海老名総合病院主催でオンライン連携会を開催しました。
CAREBOOKは参画病院さんが広がれば広がるだけ価値が広がっていくシステムだと思うので、このツールをきっかけにして地域へので病院としての存在感をだしたいなといったところとうまく合致したと思います。
お話を伺っていると、CAREBOOKを通して働き方だったり連携の在り方を変えていくということを強く意識されているのかなと思ったのですが、いかがでしょうか?
後藤さま:そうですね、そこは私が最も意識しているところです。
今の医療業界においても、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が飛び交っていますが、現状で行っているのはDXの前段階のデータ化やICT導入であって、一般企業であればすでに終わってるようなこと、それがさもDXとして捉えられてしまっているところがあると思っています。
でも本来はそうじゃなくて、様々なツールを使いながら医療とか地域連携のあり方自体を時代や地域の実情に沿った形に変えていく事が本当の意味でのDXであって、病院も早くから取り組まなければいけない。
ただITツールを導入してそれが使えるようになって終わり、ということでは意味がないと思っています。
最初のきっかけは「CAREBOOKというツールがあって、電話とFAXのやりとりが楽になりますよ!」というところから入っていって、今後は「患者さんやそのご家族と向き合う時間を作るために」、「この業務プロセスって本当に必要なの?」とか、「病院間の連携のあり方ってどうなの?」ということを考えるところまで持っていきたいなと思っています。
CAREBOOKにはそのきっかけを作っていただいて本当に助かってますね。
数字の部分に関して、CAREBOOKを利用してこうしていきたいなど今後の展望はありますでしょうか?
後藤さま:生産性の面では、電話の回数やFAXの送信ミスの削減などを定量的に計測・分析したいと思っています。
また、転院調整におけるボトルネックの抽出等にも活用出来ないかと思っています。
例えば、CAREBOOKで相談完了までの日数が出せるので、CAREBOOKを利用している場合とそうでない場合や、CAREBOOKは利用しているんだけど完了までの日数に差があるケースなどを比較・分析することで、よりスムースな転院調整につながる要因が明らかに出来ないかと思っています。
そういった疾患別や依頼先病院別での分析をするためには、これまで手集計で数日間かかっていたのですが、CSV出力機能を活用すれば短時間でおこなえるようになるので、非常に助かっています。
将来的に感覚などに頼らない、しっかりとデータとエビデンスに基づいた転院調整に繋がるのかなと思っていて、そこは非常に期待しているところでもありますね。
マネジメントの立場から考えるCAREBOOK活用への展望
最後に、管理者の立場から、CAREBOOKをどのように使って行きたいかをお聞かせください。
後藤さま:私は病院での転院調整の実務経験が乏しいので、スタッフたちがどういう仕事をしているのかを把握し評価するのがどうしても難しい部分があります
それでも私にはスタッフたちの仕事を正当に評価する責任があります。
またスタッフ自身も「自分の仕事がどう評価されてるんだろう」と悩んだり不安に感じていたりすると思います。
そういうのをCAREBOOKのデータをもとに可視化することで、正当な評価や労務管理だけでなく、スタッフとのコミュニケーションにも繋がるのではないかなと考えています。
例えば、担当者毎の相談状況のデータと人事部門が持っている残業時間等のデータを掛け合わせる事で、業務量のバランス調整や能力に応じたケースの持たせ方等を検討する事が出来るようになるでのはないかと考えています。
あとは全体的な話となりますが、積極的に新しいことにチャレンジするマインドを根付かせるキッカケにしたいと考えています。これまでの慣習や常識に囚われず、色々なことに挑戦していいんだという、成功体験の一つになるといいなと思っています。