福岡大学病院は、2022年4月より福岡県内、及び九州エリアで初めてCAREBOOKを導入されました。
今回は地域医療連携センターの皆さまに、どのような期待を持ってCAREBOOK導入を決めていただけたのか、またCAREBOOK導入後の部署業務の変化についてお聞きしました。
退院調整業務の課題感とCAREBOOKへの期待
まずはじめに、CAREBOOK導入以前に感じられていた業務課題について教えてください。
地域医療連携センター後方支援部門の主業務である退院調整業務においては、患者1名につき複数の医療機関に対して打診を行っておりますが、電話が病院間の連絡手段となっていました。電話連絡において発生する下記のような現象は、当院として課題だと認識していました。
①連絡がつかないことでの時間の無駄…電話回線が混線しタイムリーな調整ができない、担当者がカンファレンスや面談等で折り返し連絡が多発していた
②コミュニケーションエラー…口頭のみになるため、認識違いによるインシデントの発生
③電話することへの躊躇…相手の状況が見えないため、電話をすることへ躊躇する
④時間管理が困難…電話による作業中断や些細な事でも電話連絡になり、手間が生じていた。また電話業務が多く、記録や患者面談が時間外になっていた。
電話連絡における課題が多く発生していたんですね。そんな中で、CAREBOOK導入により、どのようなことを期待されていましたか?
退院調整業務における当院の課題を解決することは、患者、家族、病棟スタッフ、地域医療機関にとっても大変意義のある事だと思っています。退院調整業務の効率化は、本質的な業務である患者面談を主とした病棟での活動に注力でき、患者、家族の意向に寄り添った支援が充実します。
またタイムリーな連絡調整は、地域医療機関の業務負担軽減にもなり、患者受け入れ調整の円滑化から病院間での関係性の強化が図れると考えています。
電話連絡による課題解決以外に、CAREBOOKの導入の決め手になった部分はございましたか?
患者情報を取り扱うクラウドサービスは、情報管理が重要になってきます。CAREBOOKの患者管理は、自動附番される番号で管理され、個人情報は取り扱わずに利用できるシステムになっています。医療情報システムの安全管理において、安心できることが導入の大きな決め手になりました。
CAREBOOK利用開始に向けた準備
福岡大学病院様へは、2021年12月にオンラインでCAREBOOKの説明会をさせていただきましたが、参加された皆さまのご感想はいかがでしたでしょうか?
当センター事務室長や退院支援職員専従MSW、看護師で参加しました。説明会終了時には導入希望で全員一致の意見でした。
ありがとうございます。福岡大学病院さんは、オンラインでの説明会後にすぐ導入を決めていただいたので、私どもとしても大変印象に残っています。その後の院内準備は、どのように進められたのですか?
センター内で次年度の4月1日からの運用を目標として、各職種の専門性を発揮しました。センター長や事務室長は、本学や他部門との事務的な連絡調整を行い、12月の説明会後、3月には内諾の運びとなりました。
また、MSWと看護師は地域医療機関との調整や業務運用基準の作成等を行い、2022年4月1日からの導入が実現しました。その間、CAREBOOK担当者の方には都度サポートをいただき大変助かりました。
現在の福岡市内での導入状況はいかがでしょうか?
実際にCAREBOOKで調整を始めると、よい印象をもつ医療機関が多いようです。
福岡では当院が初めての導入でしたが、導入医療機関から他の急性期医療機関や地域医療機関への声掛けにより情報が広まり、CAREBOOKを導入する医療機関が増えてきています。
CAREBOOK利用開始後に実感したメリット
導入されて4ヶ月近くが経過しますが現在のご利用状況はいかがですか?
CAREBOOKでの転院調整を開始し、導入医療機関の拡充により調整件数は徐々に増え、100件/月ほどとなっています。早急かつ複雑な調整以外には、CAREBOOKを活用しています。
CAREBOOK利用開始時もスタッフの戸惑いや抵抗感はなく、「やってみたら意外と簡単だった」というのが正直なところです。
電話対応の状況に変化はありましたか?
電話対応の時間が減少し、心にゆとりを持った対話が現場では目立つようになりました。チャットでは文字ですが、必要時は電話での会話でしっかり打診先医療機関の担当者と向き合い、今後も人と人とのつながりを大事にしていきたいと思っています。
業務管理の方法に変化はありましたか?
業務改善の成果を可視化するものとしてCAREBOOKの打診実績がひとつの指標となります。打診データを抽出できるため、データ分析の点では非常に助かっています。打診先医療機関との調整状況も可視化されるので、転院調整で求められることや注意点、事前に必要な調整内容などもスタッフ間で共有できています。
その他、スタッフの方や周辺病院様からのお声があれば教えてください。
CAREBOOKは、担当者が不在でも転院調整の進捗が確認でき、スタッフの補完や協働する意識が高まっているように感じます。当院スタッフや導入医療機関の担当者からは、「電話よりもスムーズに調整ができるからよい」「担当者のタイミングで発信ができるため業務が滞ることが少なくなった」という意見が聞かれています。利便性が高く、文字による伝達であるからこそ伝え方の工夫・配慮が必要であることを意識して活用しています。
最後に、今後CAREBOOKに期待することを教えてください。
CAREBOOKは転院調整のコミュニケーションのひとつのツールです。ICTの活用が地域連携業務の手段として認められる時代ですので、導入する医療機関が拡充していくことで、さらに円滑で効率的な退院調整業務が期待できると考えています。