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医者は独立してクリニックを開業することができます。介護職も会社を興して介護施設を始めることができます。

では看護師はどうでしょうか?

看護師は、訪問看護ステーションという事業であれば、独立開業することができます。しかも最少3名で起業できる上に、国の介護保険制度によって「手厚く保護」されているので、日本のベンチャー企業の中では飛び抜けて恵まれている環境にあります。

一方で、開業1年で破綻する訪問看護ステーションも存在します。そこで「こういう人は訪問看護ステーションの開設をあきらめた方がいいですよ」というアドバイスをご提供したいと思います。

◆医療従事者と経営者の2つの資質が欠かせない

まずは次の10項目で、自分が当てはまるものにチェックをしてください。

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それでは次に、どうして10項目にチェックが付くとダメなのかを解説します。もしひとつでもチェックが付くようでしたら、訪問看護ステーションを立ち上げることを思いとどまった方がいいかもしれません。それは「医療従事者」としての資質があっても、「経営者」としての資質に疑問符が付くからです。訪問看護ステーションの経営者は、医療マインドと経営者マインドの両方を持っていないとならないのです。ただ、いまはチェックが付いたとしても、経営について学ぶことで将来チェックを外すことも可能です。

◆医師の理不尽な指示から解放されたいと思っているとなぜダメなのか

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訪問看護の道に進もうと考えている病院看護師の中には、病院内の縦社会に嫌気をさしている人もいるでしょう。特に勤務先に威張っている医師がいると、「この先生の顔を見ないで済むなら訪問看護でもいい!」と感じるかもしれません。

しかし、病院から訪問看護に逃げても「医師の理不尽な指示」から解放されることはありません。ましてや訪問看護ステーションの経営者となれば、もっと強烈な医師の理不尽な指示が待っていると思ってください。

訪問看護は、クリニックや病院の医師が書く訪問看護指示書がなければ仕事が始まりません。その指示書に書かれていることしか、訪問看護師は行うことができないのです。もし記載漏れがあったら、指示書を書いた医師に間違いを指摘しなければなりません。プライドの高い医師は看護師からの指摘を嫌いますし、ましてや訪問看護ステーションは「外部の人」ですから、医師は余計に書きなおしに応じたくないと思うでしょう。

むしろ病院の看護師は、実はいろいろな人から守られているのです。例えば看護部長や看護師長は、医師の要求があまりに不合理な場合、身を挺して闘ってくれます。しかし訪問看護ステーションの経営者には、医師から守ってくれる人はいません。

◆看護師長の理不尽な指示から解放されたいと思っているとなぜダメなのか

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病院のスタッフ看護師が一念発起して訪問看護ステーションを立ち上げたからといって、それまで勤めていた病院と縁が切れることはありません。むしろ元の勤務先の病院との関係性は強化しなければなりません。というのも、訪問看護ステーションの近くにある病院はすべて「重要顧客」だからです。

なので、「上司である看護師長と喧嘩して、関係を修復せずに退職して訪問看護ステーションを立ち上げる」なんてことはしないでください。 訪問看護ステーションの経営者が最初にやらなければならない仕事は、かつての勤務先への挨拶回りです。自分の訪問看護ステーションのチラシを持って「退院患者さんがいましたらお声かけください」と言って回らないとならないのです。

ですので独立開業を考えている病院看護師は、むしろいまから看護師長や看護部長と良好な関係を築いておく必要があります。

◆後輩看護師を指導するくらいなら自分でやってしまった方が楽と思っているとなぜダメなのか

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訪問看護の仕事は、いわば「一匹オオカミ」です。ひとりで自家用車を運転して患者宅を訪問し、ひとりで看護業務を行い、ひとりで帰ります。

訪問看護の道に進みたいと考える看護師の中には、毎年入職してくる新人看護師の指導に疲れている人もいるでしょう。そういう人には、訪問看護師の直行直帰勤務や単独行動は魅力的に映るでしょう。

しかしそれはスタッフ訪問看護師には当てはまっても、訪問看護ステーションを開設する人にはあてはまりません。

むしろ、後輩看護師の指導はより手厚く行う必要があります。なぜなら、ほとんどの訪問看護師は「新人」だからです。病院の勤務が長くても訪問看護は初めてという人が、スタッフとしてやってきます。訪問看護ステーションの経営者は、そういう人たちに「そもそも訪問看護とは」から教えないとならないのです。

◆別に経営者になりたいわけじゃなく、ただ理想の看護がしたいだけと思っているとなぜダメなのか

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「経営者になりたいわけじゃない」とサラッと言えてしまう人は、そもそも独立に向いていません。そのように言う人は「経営者」のことを「偉い人」「労働者を使う人」「社長さん」とイメージしているのではないでしょうか。それは偏見です。

経営者は「最もつらい仕事をする人」なのです。お金を集めて、スタッフを雇って、仕事を集めて、スタッフに仕事をさせて、利益を上げる――経営者はこのすべてを1人でこなさなければなりません。特に訪問看護ステーションの立ち上げ当初は、スタッフの数も限られているため、これらの仕事を助けてもらうことも難しいでしょう。

理想の看護をしたいという気持ちは大切です。しかしその理想を追求するには、立派な経営者にならなければなりません。

◆病院より質の高い看護をやりたいと思っているとなぜダメなのか

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病院でのターミナルケアのやり方に疑問を感じている看護師は、「ターミナルケアを専門に行う訪問看護ステーションを立ち上げたい」と考えるかもしれません。こうした想いは、訪問看護ステーションの経営者にとって強力な武器になるでしょう。熱い気持ちは、経営者には欠かせません。

しかし漠然と「病院より質の高い看護を実現したい」と思って独立を考えることは危険です。なぜなら訪問看護の仕事は、医者も医療機器も同僚看護師も近くにない場所で行わなければならないからです。

確かに、病院の看護より質が高い看護を行っている訪問看護ステーションは存在します。しかし訪問看護は、医療によって改善が見込まれず、なおかつ自宅で過ごしたい人をサポートするためのサービスなのです。つまりそもそも「病院より質が高い看護」を目指している制度ではないのです。

特に高齢者への看護では、患者のQOLを高めることと、高度な看護の提供は、別次元の話になることが多いでしょう。つまり病院の看護師たちの目標と、訪問看護師たちの目標が、まったく異なることは珍しくないのです。

◆おカネを儲けたいと思っているとなぜダメなのか

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もし「おカネを儲けたいから訪問看護ステーションを立ち上げたい」と思っている看護師がいたとしたら、絶対にやめた方がいいです。訪問看護ステーションは儲かりません。 それは、国が儲からないようにデザインしているからです。厚生労働省が訪問看護サービスの充実を図るのは、病院の入院患者を自宅に戻すためです。病院の入院患者が多いと医療費を削減できないからです。

もちろん厚生労働省は、訪問看護を受けて自宅で療養することで、患者のQOLが高まるとも考えています。しかし医療費のコストダウンは、政府や財務省を含む国家プロジェクトの1つなのです。

ですので「訪問看護ステーションは構造的に大儲けできない仕組みになっている」と覚えておいてください。

◆おカネ儲けはしたくないと思っているとなぜダメなのか

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しかしだからといって、「おカネ儲けはしたくない」と考えている看護師は、訪問看護ステーションの経営者には向きません。おカネ儲けに興味がない看護師よりはむしろ、毎日「おカネ儲けしたい」と考えている看護師の方が経営者に向いています。

というのも「おカネ儲けしたい」と思っていないと、難しくて複雑な法律や厚労省通達を読もうとしないからです。訪問看護の報酬をもらう仕組みはとても難解な上に、数年おきに内容が変わります。改定を見過ごすと収入が大幅に減る可能性もあります。

訪問看護ステーションの経営者には、「提供したサービスの対価は1円たりとも取りこぼさない」という気構えが必要です。訪問看護も医療・介護の一員ですので、おカネにならない仕事をしなければならないときがあります。本当に経済的に困っている人には、ある程度の無料奉仕が必要になります。無料奉仕をするには「貯え」が必要です。

また優秀な訪問看護スタッフを集めるには、それ相応の給料を支払わなければなりません。本当にやりたいことをするためには「おカネ儲け」は避けて通れないのです。

◆パソコンが苦手だし、覚える気もないと思っているとなぜダメなのか

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看護師の中にはパソコンにアレルギー反応を示す人もいるでしょう。しかしパソコンが苦手というだけでは、訪問看護ステーション経営者失格とはなりません。

経営者としてふさわしくないのは、パソコンのことを軽くみている看護師です。経営者自身がキイボードを操作できなくてもいいのですが、スタッフにはパソコンスキルを持っている人を必ず加えてください。

行政への申請書類はパソコンで作らなければなりません。また、申請手続きには、事前審査があって、これは電子メールでのやりとりが欠かせません。

経営者は、最低でもスタッフに「この書類はパソコンでちゃっちゃと作れるでしょ」とか「この薬の情報が厚労省のサイトに出ているはずだからダウンロードしておいて」と指示できるくらいの知識は必要でしょう。

◆医療事務に興味がないと思っているとなぜダメなのか

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病院勤務が長い看護師には「コストコストとうるさい医療事務員は苦手」と思っている人がいると思います。しかしそのような口うるさい医療事務員にリスペクトの気持ちを抱けない人は、訪問看護ステーションを立ち上げない方がいいでしょう。

「コスト漏れ」とは、医師や看護師やコメディカルが医療サービスを提供しているのに、その対価である報酬が受け取れない状態のことをいいます。コスト漏れの原因はたくさんあって、そもそも医療サービスを提供したことに気付いていないこともありますし、適切な病名を付けていないため診療報酬を請求できなかった、ということもあります。

訪問看護の現場でも、コスト漏れは日常的に起きています。例えば、同じ患者宅に同じ日に2つの異なる訪問看護ステーションの看護師が訪問した場合、原則、後の方の訪問看護ステーションは報酬を受け取ることができません。「原則」はこの通りなのですが、「例外的に」報酬を受け取ることができます。つまり経営者は、この例外を熟知していないといけないのです。

口うるさい医療事務員が医療報酬について事細かに知っているのは、コスト漏れを防ぐのが最大の使命だからです。訪問看護ステーションの経営者も、この使命を持っておかないといけないのです。

◆ひたすら頭を下げるだけの営業だけは絶対にしたくないと思っているとなぜダメなのか

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訪問看護ステーションの経営者は、訪問看護の仕事を集めなければなりません。仕事を集める行動は、すべて営業行為です。頭を下げない営業は存在しません。なので「ぺこぺこ頭を下げるだけの営業だけは絶対にしたくない」と思っている看護師は経営者には向きません。

繰り返しになりますが、訪問看護ステーションの経営者は、医療従事者であり経営者でなければなりません。そして経営者は、自分やスタッフが間違っていなくても頭を下げる覚悟を持っていなければならないのです。頭を1度も下げずに社長になった人はいません。

◆いかがだったでしょうか

ここまで読んでいただいても、「それでも訪問介護ステーションを開きたい!」という気持ちが揺るがない人には、「私でも訪問看護ステーションを開ける?」シリーズの「②開業資金は最低◯◯◯万円?スタッフ採用は?」「③行政手続きと必要物品リスト」もぜひあわせてお読みください。

◆あわせて読みたい

私でも訪問看護ステーションを開設できる?〜②開業資金は最低◯◯◯万円?スタッフ採用は?

私でも訪問看護ステーションを開設できる?〜③行政手続きと必要物品リスト

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