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急変時の緊迫した雰囲気が好き、モチベーションが高い同僚との飲み会が楽しい、給料も悪くない、しかし夕方に出勤して昼前に帰宅する夜勤がとてもつらい…

病院の看護師を長年続けていると、必ず突き当たるのが「もう夜勤嫌だ」の壁ではないでしょうか。病院勤務からの転身先としては、これまではクリニックが多かったと思いますが、最近は訪問看護ステーションが注目を集めています。当然ながら、「病院が嫌だから訪問へ」という考え方はおすすめできませんが、ただ訪問看護に転身した看護師からは「意外に向いていた!」という声も聞かれます。

そこで「私は訪問看護に向いているか?」と自らに問いかけてみてください。

お年寄りが好きな看護師は向いています

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訪問看護は、医療機関に自ら出向くことができない患者に向けたサービスです。利用者の多くは高齢者で、その大半は訪問介護サービスも利用しています。なので、お年寄りが好きな人は、比較的短期間に訪問看護の仕事になじむことができます。

高齢者が多いということは、ターミナルケアやお看取りの仕事も多いということです。確実に死に近づいている利用者に対するには、医療的な技術だけでなく、スピリチュアルなスキルも求められます。利用者が「このまま死ぬのかな」「こんな思いまでして生きていたくない」と訴えたときになんと言って返してあげられるか、人間力が試されることもあるでしょう。

家族の支えになることも必要です。お看取り期間に入った患者の家族は「亡くなってほしくない」という気持ちと「死ぬ直前はどうしてあげたらいいのだろう」という気持ちの中で揺れ動いています。訪問看護師は、ある意味で「死に慣れる」必要があります。いろいろな死を見ている訪問看護師は、家族に「こういう最期になるかもしれませんね」と伝えることができます。上手に伝えることで、家族は「肉親の死のイメージ」を描けるようになります。

単独の仕事が好きな人向きだが、でも独断はダメ

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訪問看護の仕事には「あまり大きな声では言えない大きなメリット」があります。それは「わずらわしいチームワークから解放される」ということです。

病院やクリニックで働く看護師は「絶対に」誰かと連携して仕事を進めます。医師の指示や看護師長の命令、ときには後輩看護師からの鋭い指摘を受けてストレスをためている病院看護師は珍しくないでしょう。

しかし訪問看護の仕事は、慣れれば1人で動くことができます。朝8時半ごろ訪問看護ステーションに出勤して、タイムカードを押したら自家用車で利用者宅を回ります。その後、数軒回って直帰することも可能かもしれません。もちろん訪問看護師にも上司はいますし、診療所や介護との連携が欠かせません。しかし「わずらわしさ」の少なさは、病院の比ではないでしょう。

ただ単独と独断は意味が違います。独断がNGなのは、訪問看護も同じです。

病院はホーム?、在宅はアウェイ?

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インフォームドコンセントの普及や接遇の向上などで、病院の敷居は大分低くなったと言われていますが、それでも患者にとっては医師や看護師は「上の存在」です。つまり利用者にとって病院という場所はアウェイです。

ということは、看護師にとっては、病院はホームなのです。

つまり、訪問看護を受けている利用者にとって自宅は文字通りホームなので、訪問看護師は「利用者の自宅というアウェイ」で仕事をしなければならないのです。

利用者の自宅には利用者家族がいるだけではなく、利用者の日用品・食べ物であふれています。病院での入院生活では、利用者は病院の規則に従わなければなりませんが、自宅では利用者のペースで生活が進みます。よって訪問看護師には、利用者の生活の流れに合わせた仕事が求められるのです。

病院勤務が長い看護師は、きっと最初はとまどうでしょう。いくら食事制限を注意しても、利用者の手が届く範囲においしい食べ物があるわけですから、注意が守られないかもしれません。それを医療のルールで縛ることはとても難しいのです。

しかしサッカーにおいてアウェイなりの闘い方があるように、訪問看護にも利用者ホームでの仕事の進め方があります。

プライベート重視の人は「微妙かも」です

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「夜勤が嫌だ!」と思って訪問看護への転身を検討している人には悲しいお知らせになってしまいますが、訪問看護には「オンコール」という仕事があります。

休日であっても「オンコールの日」はお酒を飲むことは許されません。利用者から電話がかかってきたら、駆けつけなければならないからです。なので、過度に「訪問看護ならプライベートを充実させられる」と思わない方がいいでしょう。

ただ、訪問看護ステーションの人手不足はとても深刻で、「オンコールなし、荒天候時出勤なし」という条件で就職できるところもあります。しかし、実際に働き始めてしまったら、その条件がどの程度確保されるのかは不透明なところがあります。

仮に訪問看護ステーションの管理者が「オンコールなし」を許してくれたとしても、同僚の訪問看護師たちは夜中の急変時でも台風の中でも利用者宅に向かうわけです。これはかなりのプレッシャーになるのではないでしょうか。

「プライベートは絶対に確保したい」と考えている看護師は、もしかすると、シフト勤務がきっちりしている病院の方がいいかもしれません。(ただし、ステーションによっても環境は全く違いますので、直接ステーション採用担当者に、まずは相談することをおすすめします)

「QOLよりエビデンス!」という人は向いていないかも

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大学病院や急性期病院の医師の中には「利用者の死は医療の敗北」と考えている人が少なくありません。こうした医師が日本の医療を進展させているので否定するつもりはまったくありません。

しかしそうした医師の下で働いてきた看護師で、「エビデンス重視」の考えが染みついている人は、訪問看護の「QOL重視」の姿勢に、すぐにはなじめないかもしれません。

お看取り期間に入った利用者宅に向かう訪問看護師は、家族や介護職に「もう何もしないでいいですよ。水分補給と口腔ケアだけしてあげてください。水分補給も体が受け付けなければ無理に飲ませる必要はありません」と指示することがあるのです。もちろんこれは、医師の指示を伝えているのですが。

この「水分補給と口腔ケアの指示のみの看護」こそ、エビデンスよりQOLを重視する看護といえるでしょう。つまり「自宅で静かに死にたい、死なせたい」という利用者本人と家族の気持ちを応援してあげることが、訪問看護で必要になるのです。

気持ちの切り替えは必要でしょう

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医療には、先進医療→急性期医療→慢性期医療→高齢者医療という「流れ」があります。看護業務も「→」の方向に向かって「よりマイルド」になります。ただ「マイルド」とは「簡単」という意味ではありません。

ですので、大学病院や基幹病院から一般病院へ、そして診療所、最後に訪問看護というふうにキャリアを移動させる看護師は、それぞれの仕事に順応しやすいでしょう。逆にいうと、大学病院から訪問看護への急激な転身は、気持ちの切り替えがとても難しいかもしれません。訪問看護も病院看護も同じ看護なのですが、違いはかなり多くあります。

しかし、最近では、教育・研修環境がとても整った訪問看護ステーションも増えてきており、そのようなステーションですと、たとえ大学病院から訪問看護への急激な転身であっても順応しやすいはずです。少しでも訪問看護に関心のある方は、必要以上に気構えずにインターネットや知人から情報収集をし、自身に一番あった訪問看護ステーションを探してみるのはいかがでしょうか。