前回こちらの記事では、『訪問看護アクションプラン2025』について解説しました。
、Ⅲの『訪問看護の質の向上』という項目に取り上げられた『特定行為に係る看護師の研修制度』について今回詳しく解説していきます。

 

なぜ今、特定行為研修制度なのか?
〜必要な医療サービスをタイムリーに提供

団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向けて、国は特に在宅医療を推進していく方針ですが、医療資源にも限りがあります。
必要な医療サービスをタイムリーに患者に提供するためには、チーム医療の一層の推進が欠かせません。特に看護師に関しては、医師の判断を待たずに現場で一定の診療の補助を担う役割が求められています。

ちなみにこれは何も在宅に限ったことではなく、病棟やICUなどでも外来診療や手術で慌ただしい医師の到着を待たずに、看護師が患者の症状に合わせて必要な処置等を行うことができれば、患者へのメリットは大きいと言えます。

こうした高い臨床能力を持った看護師は、すでに現場で活躍していて、主治医の指示のもと高度な医療処置を行っている実態もあります。そこで、難易度の高い診療の補助行為を安全・確実に実施するための研修体制を整え、それらを「手順書」という医師の包括的指示のもとで行える看護師を計画的に増やしていくという方針になったのです。

特定行為研修とは?押さえておきたい基礎知識

特定行為に係る看護師の研修制度について(厚生労働省)

看護師が行える業務は、「主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示 をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。(保助看法第37条一部抜粋)」と法律によって規定されています。つまり、医師の指示のもとで診療の補助にあたる行為をしなければならず、医師の指示の範囲を超えたことはできないのです。

そもそも、看護師の業務範囲である「診療の補助」と医師のみ行う「絶対的医行為」の境界というのも一部行為を除いてあまり明確に決まっていなかったため、医療機関によっても判断が異なっていました。そこで、看護師が業務として行える「診療の補助行為」として明確に位置づけたものが『特定行為』になります。

この『特定行為』は、上記の表に示したように38の項目に分類され、医師がそれぞれの診療の補助を看護師に任せる際に、指示として作成する文書が『手順書』です。
この手順書のなかには以下の6つの項目が盛り込むことが必要とされています。

  1. 当該手順書に係る特定行為の対象となる患者
  2. 看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲
  3. 診療の補助の内容
  4. 特定行為を行う時に確認すべき事項
  5. 医療の安全を確保するために医師等との連絡が必要となった場合の連絡体制
  6. 特定行為を行った後の医師等に対する報告の方法

つまり、医師の思考過程を手順書で再現し、それに則った業務を行うことで医師の指示のもと「診療の補助」を行うのです。

特定行為研修を受けるには?

特定行為研修は、厚生労働大臣が指定する『指定研修機関』で行われます。
指定基準は以下の通りで、研修に必要な施設や設備を利用でき、適切な指導体制を確保していることなどが条件となっています。
また、特定研修の受講者としては、概ね3~5年以上の実務経験を有する看護師が想定されています。ただし、この経験年数に関しては必須条件ではなく、「所属する職場において日常的に行う看護実践を、根拠に基づく知識と実践的経験を応用し、自律的に行うことができる」看護師のことで、「チームの医療のキーパーソンとして機能することができるものであること」とされています。

具体的にどんな指定研修機関が実施しているかは下記のページを参照してください。
厚生労働省ホームページ(平成29年8月現在)

特定行為研修を修了したナースの役割って?ミニドクター??

特定行為研修を修了した看護師の役割とは何なのでしょうか?
2015年7月に全日病が都内で開催した「看護師特定行為研修指導者講習会」ではこのようなテーマでディスカッションが行われました。

一言で「特定行為研修」といっても、研修を受けた機関によって修了者像は異なる上、施設によっても求められる役割は多少異なるでしょう。
しかし、同講習会のディスカッションでは、特定行為研修を修了した看護師に期待される役割として、「多職種連携の調整役、患者の重症化予防や急変時のタイムリーな対応、在宅患者・家族のサポート役として病院や在宅をつなぐ連携者としての役割」などが挙がりました。

それらを通して安心な医療の提供、医療の質の向上に繋がること、同時に医療費のコスト削減や医師の負担軽減にも繋がるなどの意見が出され、また看護師のロールモデル、指導者としての役割にも期待の声が寄せられました。

また、『ミニドクター』ではなく、看護師としての能力と専門性を高めた実践者としての能力と専門性を高めた実践者として頑張ってほしいとの意見もありました。

このように、本来の看護師としての役割を担いつつも、医師のような高度な知識とスキルを兼ね備えた存在で、看護そのものの役割を見直し、役割拡大につながることでしょう。

特定行為研修でナースの働き方はこう変わる!

では、特定行為研修を修了したナースは実際の現場ではどう活躍しているのでしょうか?
まず、研修の具体的な内容の一例を挙げます。

例えば、藤田保健衛生大学病院での研修だと2014年度の内容は、内科3ヶ月(ER1ヶ月、CCU1ヶ月、腎臓内科と内分泌内科をそれぞれ2習慣ずつ)、外科3ヶ月(心臓血管外科、呼吸器外科、肝臓秘蔵外科、総合膵臓外科のうち3科目を1ヶ月ずつ)、麻酔科6ヶ月(手術室4ヶ月、ICU2ヶ月)です。

では実際この研修プログラムを終えたナースは、現場ではどんな活躍をしているのでしょうか?
とあるナースは、外科で助手として手術に参加したり、術後はドレーン管理や抜糸・抜鈎のタイミングの判断など指導医と話し合いながら術後管理を行いました。

またある時は、ICU入室中の患者さんのモニター心電図が変化していることがありましたが、そのときICU医師は他の患者さんの急変対応中で手が離せませんでした。そこで、このナースは12誘導心電図をとり、前回のものと比較。V3~V6でT波の陰転化とQTがやや延長していることを判断し、電解質の補正と心筋マーカーの採血オーダーを提案し、医師に代わり対応しました。

これらの経験を通して、特定行為研修を修了したナースの役割が少しずつ見えてきたそうです。
一つは、より患者さん・家族の目線での診療を行うということ。これはわかりやすい言葉で病状の説明をしたり、治療方針などに患者・家族背景を十分考慮するなど、看護師として働いてきた経験が大きな強みとなるものです。

もう一つは、患者さんの病状に対する素早い対応で、担当医が外来や手術中、あるいは他の重症患者さんで手が離せない時などに、ある程度の代役を果たすことができるという点。

おわりに

看護師特定行為研修について、少しイメージが湧いてきましたか?
研修を受ける機関や実際に働く現場によって活躍の内容が多種多様ですが、それだけ自分自身に興味関心があって極めたい分野をしっかり勉強できる制度です。
高齢化によってますます高まる医療の需要を支える役割だけではなく、患者さんや家族にとってより質の高い安心した医療を提供できる場をつくる、そんな役割も担うエキスパートを目指してみるのも、今後のキャリアを考える看護師にとっては大きな選択肢となるでしょう。

【参考文献】
日本看護協会 特定行為研修制度を活用した 看護師の活動

厚生労働省 特定行為に係る看護師の研修制度

【無料☆訪問看護ステーション開業について座談会開催】

【首都圏エリア限定】
訪問看護施設の開業に興味のある方を対象とした座談会を開催します。
その場で、開業におけるお悩みなどを解決してください。
また、開業の仲間を集める場としても是非ご活用ください。

■ 料金: 無料
■ 時期: 1月、2月、3月随時開催
■ 内容: (予定です)
  ※ 約60~120分程度(休憩込み) を予定しております
  1) 訪問看護の収益構造<入門編>
  2) 国策における、訪問看護の位置づけ
  3) 訪問看護事業のやりがいについて
  4) 質疑応答および参加者同士のコミュニケーションの時間
    などなど

本イベントの開催に伴い、ケアブックのご利用者枠として優先応募フォームをご用意しました。
※お席に限りがございます。申し込み順でのご案内とさせて頂いております。

具体的な開催日程と場所につきましては、応募時のメールアドレスに送付いたします。
日程と場所を確認してからの参加判断で構いません、まずはお気軽にご登録ください。