こんにちは。3Sunnyインターン生の牧野です。 
2月16日(木)、銀座Appleで行われた『テクノロジーが変える介護の未来』に参加してきました。このイベントの主催は株式会社エス・エム・エス様で、同社が提供する介護事業者向け経営支援サービスカイポケに関するトークイベントでした。
介護業界はIT化がまだまだ進んでいないという認識は、業界外の人にも浸透していると思いますし、ITをこれから導入していきたいと思っている介護事業者の皆さんもたくさんいらっしゃるかと思います。しかし、実際のところ具体的にどう業務が改善されていくのかわからないが本音ではないでしょうか。
今回のトークイベントでは詳細な業務改善内容がたくさん提示され、介護業界外の私でも自分が事業所経営者だったら導入したいと強く思えるような内容でした。
介護業界はテクノロジーによってどのように変わり、どのように変わっていくのか。
密度の濃い1時間を更に濃縮した、とびきりのエッセンスを以下に書き起こしたいと思います。

スピーカー
岩崎 英治 (いわさき・えいじ)  株式会社グレートフル 代表取締役
中浜 崇之 (なかはま・たかゆき)  世田谷デイハウス イデア北烏山マネージャー/NPO法人Ubdobe理事/介護ラボしゅう代表
藤田 和大 (ふじた・かずひろ)  株式会社エス・エム・エス 介護事業本部 介護経営支援事業部 事業開発グループ グループ長
モデレーター
町 亞聖 (まち・あせい)  フリーアナウンサー/元日本テレビアナウンサー/在宅医療カレッジ学長

◆ 日本の介護業界の現状

町さん 改めまして、今日進行を務めますフリーアナウンサーの町亞聖と申します。よろしくお願いいたします。たくさん集まって頂けて大変嬉しいですね。Appleと介護ということで、とても画期的なイベントのお手伝いができることをすごく嬉しく思っています。皆さんに今日来てよかったと思ってもらえるような情報をお届けできればと思っております。
今日会場で一般の方というのはどれくらいいらっしゃいますか?介護事業者の方は?じゃあその他の人は…その他の人が多いということですね。

(会場笑)

町さん 介護に関わってない方が多いというのはとても嬉しいことです。今本当に日本は高齢化が進んでいて大変厳しい状況になっていますので、日本の介護現場がどうなっているのかという大きなところをまずは株式会社エス・エム・エスの藤田さんからご紹介頂ければと思います。

藤田さん ちょっと堅い話から入ってしまうんですが、ご存知の通り少子高齢化が進んでいく中で、2025年には65歳以上の人口が30%を占め、一方で生産人口自体が減っていくため、38万人の介護従事者が不足すると言われています。
こういう状況を踏まえて、実際の介護事業者さんがどうなっていくのかを見ていくと、全体の7割近くが個人経営に近い形で介護事業を経営されていて、実際会ってみるとですね、ご自身が今までずっと介護をやってきて、「自分が日本の介護を変えていきたい」という強い思いを持った方が多いです。そういう方々に対して、近年大手の異業種(不動産業、保険、セキュリティなど)からの参入が増えてきていまして、小規模の事業者さんを取り巻く競争環境が激化している状態です。

◆ カイポケとiPadを導入して起こった現場の変化

町さん まずは藤田さん、カイポケのサービスや機能を今日初めて聞くという方も会場にいると思いますので、教えて頂けますか?

藤田さん カイポケは2つの大きなコンセプトでやっています。岩崎さんと中浜さんからお話があったように、現場の業務の中で紙に何かを記録することがすごく多くてですね、本当の介護業務に時間を当てようと思っても時間が取れないことが往々にして起きています。僕らはこの業務効率化をまずは1つのコンセプトに掲げています。
それから先ほどお話したとおり、介護に対する思いは本当に強い経営者さんが多いんですけど、「実際会社の経営はしたことがなくて、ちょっとよくわからないんだよね」という声を頂くので、僕らとしては業務の効率化だけではなくて、経営全般のトータル支援もコンセプトにしています。
業務効率化の例をあげますと、介護事業者さんは月末に、その月に実施した介護サービスの記録を全部取りまとめて国保連に対して請求書を発行するんですけど、この作業がものすごい時間がかかるんですね。月末月初を3人くらいで集まって、紙で書いていた日々の介護記録を引っ張り出してきて、それを見ながら全部入力をしてようやく請求できるんです。このような大変な状況が、カイポケやiPadを導入すると、iPadに入力した日々の介護記録がいろんなものに連動できるので、月末月初に実績を見ながら確認とかチェックを簡単にするだけで請求業務ができるようになります。

町さん ありがとうございます。それでは実際にですね、このカイポケとiPadを導入して現場ではどんな革命が起きたのか聞いてみたいと思います。まずは具体的な事例を含めて岩崎さんお願いします。

岩崎さん インストール型のソフトのときは、入力作業をするために事務所に戻る必要がありました。そうすると、利用者さんを見る人間が1人減ってしまうのでリスク管理の面でも不便だったんです。それが今では、利用者さんと過ごす場所に数台iPadが置いてありますので、利用者さんとお話をしながら実績を入力することができます。実績の入力はこれまでは管理者や生活相談員のような人たちがやっていたんですけど、今はパートさんと専門職しかやらないですね。これはかなり大きな変化で、生活相談員さんがご家族とお話する時間や、地域活動をする時間が爆発的に増えたと感じています。

町さん 地図に関してはいかがですか?

岩崎さん 当社は60人定員のデイサービスが2ヶ所あるので、毎日のようにルート変更しています。デイサービスでは朝お迎えに伺うのですが、この時間が5分ずれるだけでクレームに繋がります。ご家族はデイサービスに行くおじいちゃんおばあちゃんを見送ってから出勤されますからね。
今までは、紙にルートを書いて、前日か前々日に2,3人で同乗して下見をしていたんですよね。経営の観点から言えば人件費が莫大にかかっていました。今はカイポケとiPadが同行してくれますから、新しく入職した人に教える手間が省けて人件費の有効活用ができるんですよ。経営側も良いですけど、ご利用者さまも遅刻やロスが減るので、両者にとって良いシステムだなと痛感していますね。それに映像も残せるので、「ここの玄関から入ってください」という指示をわかりやすく説明できるんですよね。これは今までありえなかったです。

町さん 続いて中浜さんいかがですか?

中浜さん 今まではレクリエーションやアクティビティをするときに何かを用意しなきゃいけませんでした。例えば、歌うことになったら今までは歌詞カードや音源を用意していたのですが、iPadがあるだけでその場で検索して好きな曲を聴いて歌詞も見ることができるんですよね。用意された遊びではなくて、一緒にその時間を作っていくという点では活用方法がたくさんあります。
あとはお一人お一人の様子を簡単に残せるので、変化がすごく追いやすくなりました。手書きだと面倒になってきてしまうことがありますからね。カイポケでは頻出の項目はボタンを選択するだけで済みますし、重要なところだけコメントで残せますので。
私のところでは、こういう記録をプリントアウトして連絡帳として利用者さんにお持ち帰りして頂くんですが、写真も載せられるのがとても良いですね。僕がどれだけ文章がうまくて、200文字300文字書こうが、写真があった方が「あ、あそこの事業所さん楽しんで通っているんだなぁ」というのが確実に伝わりますからね。
介護の現場は結構ご年配の方も働いていらっしゃって、スマートフォンやタブレットを使ったことが無いという方も多くて、導入するまで少し大変さはあります。でも、iPadって実際すごく使いやすいので最初のハードルだけ越えると、誰でも使いやすさを実感しますよね。うちの65歳くらいの職員さんはこれをきっかけに、携帯をスマフォに変えちゃいました(笑)

◆ 経営・運営の立場から起こった変化

町さん カイポケとiPadを導入することで、従業員の方たちの働き方改革ができているわけなんですけれども、岩崎さんや中浜さんは経営者、マネージメントする立場でいらっしゃるということですので、経営・運営の立場からどんな変化があったのか伺っていきたいと思うんですが、中浜さんいかがですか?

中浜さん 通所介護の事業所っていうのは利用者さんを獲得するというのも仕事の一つで、ケアマネージャーのもとに行って、「新しい利用者さん紹介してください」って営業をするんですね。介護をしたくて入職したのに営業をしなきゃいけないとなると結構ハードルが高いですし、そもそも営業に人が取られてしまうのも運営的によくありませんでした。それが、先ほどお話した連絡帳が利用者さんのご自宅にあると、僕達の代わりに営業をしてくれるんですね。
実はケアマネージャーさんはご利用者さんのご自宅に毎月1回必ず行くというルールがありまして、そのときに「この1ヶ月通所介護の事業所で何をしていたのかな?」と連絡帳を見て「あ、すごく楽しそうにしているじゃん。ここなら信頼できるから別の利用者さんにも紹介したいな」となるんです。わざわざ僕達が行かなくても、この連絡帳が営業をしてくれるので人件費の削減にもなりますし、営業力もアップして利用者さんが現場に増えて、利益を獲得できるっていうことにもつながりました。

町さん 中浜さんから営業という言葉が出ましたけど、皆さん知っていましたか?自然と利用者は集まってくるものではないんです。営業の面でもいい効果があったんですね!続いては岩崎さん、経営する立場として、どんな変化や革命が起きましたか?

岩崎さん 今までは月末月初に1ヶ月の売上を締めて今月の売上はどうだったか見ていたのですが、これ、経営の観点からすると相当リスクがあったんですね。それが今ではクラウド管理で毎日数字を入れていますから簡単に日次決算ができるようになりました。

介護業界で売上の話とか数字の話とかをすると結構批判されることが多いんですけど、僕は徹底的にするべきだなと思っていて、自分たちが今日いくらの仕事をしたのか、どれだけ価値のある仕事をしたのかっていうことを、やっぱり現場の方にも知って頂く必要があると思うんですね。

例えば、毎日利用される方がいらっしゃったら、30万近くが事業所に支払われるわけですね。1年だと360万円、10年だと4000万円近くになります。1件で家が建つような、そのくらい価値のある仕事をしているのを、やっぱり現場も理解しなくてはいけないと思うんです。
それから、子供食堂というのをデイサービスでやっています。デイサービスは16時くらいに利用者さんが帰りますのでその後の空き時間を利用して、近所の子供たちに無料でカレーとかを振る舞っています。訪問介護もケアマネージャーの事業所も通所も移動販売じゃないんですね。地域に何十年も根ざさないといけない事業なんです。その中で、今まで業務効率化ができないがために地域に根ざし切れないでいた。それが今、地域活動に時間が割けるようになったので、すごいありがたい状況になっているのかなぁと。

◆ カイポケ開発にかけた思いと未来

町さん 藤田さんに改めてなんですが、このカイポケの開発にかけた思いを聞かせてください。

藤田さん もう結構岩崎さんに言って頂いちゃったんですけど(笑)、僕らとしては経営として何かを踏み込む時の意思決定の情報をしっかり伝えていきたいという思いで開発していますね。「利用者さんの数が減ってきているなぁ」ですとか「あれ、うちの職員の人たち結構一人あたり担当している数多いし、キツそうだなぁ」という意思決定の情報が、今までは月末締めてみて、紙を一つ一つ洗い出してみてようやく明らかになっていたんです。
これをリアルタイムで見られるようにしていくことはすごく重要なことだなと思っておりまして、これを僕らは解決していきたいと、そういう思いで開発してきました。

町さん これからは経営的な問題だけではなくて、ケアの質に関するデータの蓄積もカイポケでできたらいいですよね。

藤田さん そうですね。やっていきたいですね。今、2万弱の会員様のデータが僕達の情報の中に入っていて、デイサービスで実際にどんなケアがされていて、どれくらいの質なのかというマクロのデータは持っています。こういったものをどんどん分析をかけていきながら、逆に僕らも介護事業所さんに「もっとこういう方法があるんじゃないか」という情報を提供していきたいなと考えています。

町さん 介護にも客観的な指標につながるデータの蓄積というのはこれから本当に大事だと思いますし、底上げにつながっていく貴重な宝がここに詰まっているような感じがします。

藤田さん まさに僕らの頑張りどころですね。データの分析をしながら、介護業界全体の健全化を図っていくというところは、まさにミッションとしてやり遂げなければいけないと考えております。

町さん 期せずして未来を藤田さんにもう語ってもらっちゃいましたね。岩崎さん、未来の展望を聞かせてください。

岩崎さん 今日のテーマは「テクノロジーが変える介護の未来」ですが、まさにその通りだと思いますね。介護の現場を変えるということは、その家族の生活を変える、そして地域を変える、ということになると思いますので、そういうものをカイポケさんで開発して頂けるとうれしいですね。

町さん 中浜さんいかがですか?

中浜さん ICTやロボットができるところと、人間がやるべきところの住み分けることが大事だと思っています。「(ICTやロボットに仕事を)とられちゃう」という感じではなく、うまく付き合ってうまくより良い方向に持っていくことで、世界に先駆けて高齢化社会になって行く中で日本の誇れる産業になっていくんじゃないかなと思います。

町さん 皆さんどうもありがとうございました。