こんにちは。株式会社3Sunnyインターン生の牧野です。
皆さんは、自分自身の最期についてどのように過ごしたいのか考えたことはありますか?
例えば末期がんになったとき、病院で最後まで病気と戦いたいと思う人、在宅で家族と過ごしたい人…考え方は、その人自身の価値観や支えるご家族の環境によって、十人十色です。
本日は、これまでにたくさんの人の意思決定支援をされてきた楽患ナース株式会社の岩本ご夫妻にお話を伺ってきました。

岩本 ゆりさん
2003年~: 医療コーディネーター開業
2003年~: 日本看護協会にて広報委員
2007年~: 楽患ナース株式会社取締役
2008年: フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞

岩本 貴さん
~2004年: アクセンチュア株式会社CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)グループマネジャー
2002年~: 特定非営利活動法人楽患ねっと 理事長就任
2007年~: 楽患ナース株式会社代表取締役

◆在宅医療で緩和ケア・ターミナルケアを支える場所を作ろう

ー 訪問看護ステーションを立ち上げたきっかけを教えて下さい。

貴さん) 意思決定支援とは、患者さんの医療の選択を支えることなんですけど、その選択は、治療するだけではなくて、治療をやめるとか在宅医療に移行するという選択肢もあるんですよね。患者さんが「一旦積極的な治療をやめて家に帰りたい」となったときに、在宅で緩和ケアやターミナルケアを支える医療体制がまだその頃は充実していなかったんです。だったらわれわれがやろうか。これが訪問看護ステーションを立ち上げたきっかけです。

ー 「帰りたいという思いを支えてあげたい」というところから始まったのですね。お二人が設立しようとした頃(2007年)は、「最期まで病気を治すことがいい」という考え方が主流だったんですか?

ゆりさん) ちょうどがん難民(※治療方針に悩んだり、より良い治療をしてくれる医師や病院を探し求めたりして、医療界をさまようがん患者を指す造語)と呼ばれる人たちがたくさんいたのが2003年頃で、医療コーディネーターとして相談を受けていた方の7割ががん末期だったんですね。そこから、がん対策基本法というのが2007年に設立されて、世の中が「治療一辺倒の考え方でがん難民にさせるのではなくて、ちゃんと在宅療養の道を示していかないといけないよね」という風潮になっていきました。
私はもともと緩和ケア病棟にいましたので、在宅に戻る患者さんも見てきたのですけど、結局は病院に戻してしまっていることが多いのが現状でした。言葉では言われてきているけどすごく脆弱なんだなと感じましたね。終末期の方に在宅療養を提供できるプレイヤーがいないんだったら、自分たちでやってみようということになりました。

◆在宅看取りをできるプレイヤーは増えてきた。でも、治療中の段階から積極的に看るプレイヤーは少ない。

ー 設立当時と現状を比較して、意思決定支援や在宅介護医療という点において、世の中が進化していっているという実感はありますか?

貴さん) うちで在宅看取りをしている患者さんの数が以前よりちょっと少なくなってきたので、在宅看取りできるプレイヤーが増えたんだろうなと勝手に推測しています。そういう意味では、やれる人たちが増えたのかなと。

ゆりさん) 在宅看取りの件数は減ってきているのですが、私がやりたかった緩和ケアをやっているプレイヤーはまだまだいないと感じています。
緩和ケアは看取りの部分だけではなくて、病気になった始めからするべきものなんですよね。「自分が受ける医療をこういう風にしていきたいです」と決めていく初めの段階から関わることができれば良いケアをすることができると、医療コーディネーターをやっていた頃から思っていました。
私達の訪問看護ステーションがある足立区は文京区が近いので、文京区の大きな病院に抗がん剤治療で通っている人が結構います。挨拶回りをするのに文京区の大学病院を回ったら、「抗がん剤治療で通っている人たちというのは、『地元の病院に行ってください』と言われても「嫌です」と言って、結局最期まで大学病院に通ってしまう」という話をされました。そこで、「終末期に『在宅にしましょうね』でいきなり訪問看護を受けるのではなくて、病気になり始めや治療中の人に関わって、意思決定支援の部分をしていきたい」というお話をさせて頂いて、少しずつ治療中の人を看る数は増えてきていますね。こういう治療中の段階まで含めた緩和ケアが必要だって言っている人はあまり見かけなくて…積極的にやっている人はいないのが現状ですね。でもすごい大事なことだと思うんです。

貴さん) 治療中に訪問看護が入ってサポートして下さいと言う先生はそんなにいないかもしれないですね。

ゆりさん) でも最近は、退院しても結局病院に戻ってきてしまいそうな患者さんに対して、「大学病院に戻ることはできないんだよ」「最期どうするのか決めておかなきゃいけないんだよ」という話を、治療中からちょっとずつして欲しいという依頼は増えてきていますね。

◆課題を見つけることが意思決定支援の肝

ー 意思決定支援の行き着く最終的な形って、どういうものになるのでしょうか。

貴さん) 決められないのには理由があって、その理由以外のところをサポートしても煩わしいだけですよね。本人が整理できているのであれば他の人間が根掘り葉掘り関わっても「結構です」という話になってしまう。
でも何かを決めなくてはいけないときに決まらないのは何か課題がある。そこを見つけることが我々の肝だと思っています。それはひょっとしたら人生観かもしれないし、もしくは単に情報不足かもしれない、医者との信頼関係ができていないことかもしれない。なにで引っかかっているのかを見つけるセンスが意思決定支援では一番の肝。課題を見つけてそれに対しての解決方法を一緒に考えるというのが我々の考える意思決定支援ですね。

ゆりさん) 「入院したらもう家には帰れないと思いますよ」と言われて、家にいる人もいれば、逆に最後まで戦いたいと考える人もいます。そこは人生観ですよね。
これまでの人生で困難に対してどう対応してきたのか、そういう話をしていると「そうだ、俺はこういう人間だった。最後まで戦うんだ!」となる人もいます。

◆委ねてもらう相手になるというのがすごく大事

ー 意思決定支援のところで、患者さんって、なかなか自分の意見を言えないと思っていまして…看護師さんに対して「変なこと言っちゃったらどうしよう」という緊張を解すコツって何かありますか?

貴さん) そもそも信頼できない相手に対して何もいいませんから、その信頼できる人間たることが大切なんじゃないですかね。テクニック云々よりも「この人に本音で話したら何かが出てくる」と思ってもらえるような信頼できる人間であるってことだと思います。

ゆりさん) 訪問は担当制にはしていないんですけど、できるだけ回数多く同じ人が行くようにしていますし、信頼関係を結んでいくというのは気をつけていますね。あと時間も結構かけますね。

貴さん) そうですね。終末期の人だと1時間以上かけることもありますね。

ゆりさん) やっぱりある程度時間がないと話をするのは難しいと思うので、しっかり1時間はいて、世間話とか色々なお話をするって最初は決めていますね。

ー 世間話から始めて、どんどん仲良くなっていくという感じなんですね。

ゆりさん) 委ねてもらう相手になるというのがすごく大事ですね。委ねてもらう相手ってすごく信頼感がある相手ということですから。そういうことを意識して関わるのと関わらないのでは全然違うと思いますし。
それに世間話も、なんとなく話しているんじゃなくて目的があって話しているんですよ。「でかけたんだよー」という話を患者さんがしてくれたら、「どこに行ったんですか?」と返す。別にどこに行ったのかが聞きたいわけじゃなくて、そこに行ったときに何か困ったことがなかったのか、どうして急に外出しようって気持ちになったのか、そういうことを聞き取りたくて会話をしているんです。
例えば、「銀行に行くために車に乗ろうとしたら、足が全然上がらなくてびっくりした」という話が聞き出せたら、「じゃあリハビリを入れてみましょうか」という提案をすることができますよね。

◆医師が施す選択肢も増え、患者の持つ情報も増えた

ー 意思決定支援をもっと広げていく活動は何かされていますか?

貴さん) 研修は14回くらいやっていますね。意思決定支援は医療のホットトピックになっていますので、今はもうどんどん広がっています。彼女もよく講演会などに呼ばれていますし、黙っていてもどんどん広がっている感じです。ここ2, 3年ですね。

ー ここ2, 3年で注目されるようになった背景はなにかあるのでしょうか?

貴さん) 患者側も色んな情報を手に入れられるようになってきましたから、選びたいと思うようになったのだと思います。それについて医者も当然質問されますから、「意思決定支援が求められているのだな」とわかれば意識していきますよね。それが今臨界点に達しているのではないかなと思います。
それに新しい治療法がどんどん出てきていて、医師ができる治療も増えています。昔はもっと少なくて、患者も情報が少ないから、特に悩むような瞬間が少なかったんじゃないかな。今は、医師が施す選択肢も増えましたし、患者の持つ情報も増えたので、情報整理をしてやることを決めなきゃねという場面が増えてきているんですね。

ゆりさん) 最近多いのはACP(Advance Care Planning)というもので、認知症の人に対して、選択肢がたくさん出てきたときに、本人が意見を言えない中でどうしていくのか?を考えていくものです。その選択肢を認知症になった本人に聞いてもわからないですし、家族に責任を負わせることもできないし、最期の最期まで点滴したり胃ろうを作ったりすることがいいことなのか、社会問題にもなったじゃないですか。
3年前に、末期の点滴をいつまでやるのかといった、終末期にどういう処置をするべきなのかガイドラインができて、そのあたりから本人が意思決定できないときのために、その前の段階でケアプランを考えようというACPが流行りだして、その辺りから、意思決定支援という言葉もすごく流行ったんですけど…
今中心にあるのは「本人ができなくなったときにどうするの?」っていうところの意思決定支援で、まだ「自分が決めるためにどうしたらいいの?」という意味での意思決定支援は少ないかなって思いますね。そこを私たちはやっています。

◆楽患ナースさんでは採用強化中!

インタビューさせて頂いた楽患ナースさんでは、現在採用を強化中です。緩和ケアや終末期ケア、小児看護に興味がある看護師さん、ぜひお気軽に申し込んでみてくださいね。

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