080_0_4918520f48909b8bee97bc5a09dcd16f_s

「住み慣れた家で最期を迎えたい」と思うことは、決して珍しいことではありません。国も在宅医療を推進しており、昔に比べ訪問診療や訪問看護などの在宅サービスが充実してきました。中にはターミナル期の患者様を専門に診療する訪問診療所もあります。

今回は、私が訪問入浴介護で関わらせていただいたターミナルケアについてお話したいと思います。

◆ターミナルケアとは

080_1_kaigo_woman_fotor

まずターミナルとは、積極的な治療をしても延命の見込みがない状態のことをいい、終末期と表現されることもあります。ターミナルケアとは、そのような時期にある利用者さまが苦痛なく自分らしい最期を迎えられるようにケアすることです。
ターミナルケアを受ける患者様というとがん末期の方が思い浮かぶかもしれませんが、高齢が原因で疾患名がはっきりしない寝たきりの方などもいらっしゃいます。あくまでターミナルケアの一例として挙げると、がん末期の方の場合は辛い症状のひとつに癌性疼痛がありますので、薬で疼痛コントロールをしながら安楽に過ごせるようにしていきます。
寝たきりで食事が摂れない方の場合は、胃瘻やCV(中心静脈栄養)はせずに水分が口から摂れる時には介助するようにします。

◆ターミナルケアで注意するべきこと

080_2_606723

ターミナル期は、急変がいつ起こっても不思議ではありません。その時にどのように対応するのかあらかじめ医師や訪問看護師と打ち合わせしておく必要があります。在宅ケアはチームケアですので、情報共有が必要不可欠です。現場では、患者様に関わる全ての人が自由に記入できる連絡ノートをよく活用していました。
そして私が最も大切だと思うことは、利用者さまとご家族の気持ちに常に寄り添うことです。
治療をしないと決めても、次々と現れる辛い症状に不安を感じる時もあるでしょう。その為ターミナルケアを受けると決めたら、その後起こるであろう症状やケア方法を丁寧に説明する必要があります。私たち専門職ができるケアはもちろんですが、ご家族でもできるケアを一緒に考え実施することも有効だと思います。

◆最期に大好きだった入浴をさせてあげたいというご家族の思い

080_3_044789

寝たきりの高齢な利用者さまがいました。この方はコミュニケーションがとれず、また経口では食事が摂れないため点滴で水分のみを補っている状態でした。手足の拘縮も強く褥瘡が数個できていました。
ご家族は「入浴で急変しても構わない」とおっしゃる位入浴希望が強く、医師や訪問看護師からもよほど全身状態が悪くない限り入浴させてほしいという依頼がありました。これは、利用者さまが天寿を全うしたため延命を望んでいないことと、最期に大好きだった入浴をさせてあげたいというご家族の思いからでした。
何度か訪問しましたが、血圧が聴診ではとれない日もありました。しかし、なるべく負担が少ないようにスタッフで入浴方法を考えケアしました。また私たちが訪問する前後に訪問看護師が来て状態確認してくださり、情報を共有することで安心してケアに入ることができました。
数ヶ月後に利用者さまは亡くなりましたが、ご家族から最期まで入浴させてあげることができて良かったと、感謝の言葉をいただきました。

◆利用者さまの希望を第一に優先する

080_4_251004

ある年の年末に、50代で末期がんの方のサービス提供依頼が入りました。余命はあと1ヶ月もたないかもしれないという医師の診断でしたが、お風呂が大好きで体を清潔にして新年を迎えたいという利用者さまの希望がありサービスを開始しました。
まず初めのカンファレンスで医師や看護師に注意点を聞きました。利用者さまの意識ははっきりしていましたので、多少バイタルサインの値が悪くても利用者さまの希望を叶えてあげるということもサービス担当者全員で意思統一しました。
翌日訪問すると全身状態はそこまで悪くなかったのですが、癌性疼痛が強く動くのが辛いので、入浴ではなく清拭にしてほしいという希望があり行いました。数日後、利用者さまは亡くなりました。
入浴させてあげられなかったことを悔やむ気持ちもありましたが、利用者さまの希望を第一に優先するということができたので、意味のあるサービスができたのかなと思っています。

◆その人らしさを活かすのが在宅

080_5_b6bdbfec834d1bbf300bfc6b5305cc19_s

 

在宅でのターミナルケアは、病院と違って設備が整っていないことやすぐに医師の指示を仰げないなど不便なこともあるかもしれません。しかし利用者さまが過ごす環境としては、住み慣れた場所でご家族も近くにいるので落ち着いて過ごせるのではないでしょうか。
その人らしさは十人十色です。それを生かすことができるのが在宅だと思います。
どうしたら利用者さまやご家族が納得できる時間が過ごせるのか、常に考えながら関わっていきたいですね。