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スキルアップをしたい!と考えている看護師さんに、「4つの上の資格」を紹介します。医師不足や超高齢社会という大きな社会問題の解決策のひとつに、看護師の役割の拡大が挙げられているからです。そのため、病院が副院長に看護師を据えるところも珍しくありません。

そうなんです。「4つの上の資格」を取得することは、単にスキルアップが期待できるだけではなく、看護師自身の昇格や昇給に深く関わってくるのです。

◆上の資格を取るメリット

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看護師が取得できる「上の資格」には

1.専門看護師
2.認定看護師
3.認定看護管理者
4.特定行為看護師

4つがあります。このうち1,2,3は、日本看護協会が認定する民間資格になります。「民間資格」と聞くと、グレードが低い資格のように感じるかもしれませんが、この3つの資格に限ってはそんなことはありません。いずれかの資格を持っている看護師は「すごい看護師」と認められます。

4の特定行為看護師は、厚生労働大臣が管轄になる点で、1~3と異なります。また、4だけ必要な研修も試験も定まっていません。厳密にいうと特定行為看護師は「資格」ではないのですが、そのことは後述しますので、ここではこれも「資格」と呼びます。

さて、この4つの資格に共通するのは、次のメリットです。

  • 確実にスキルアップできる
  • 業務の裁量範囲が広がる
  • 管理職への道が開ける
  • 給料が上がる可能性がある

ただデメリットもあります。

  • 資格を取得するのに時間と費用がかかる
  • 管理職や給料アップが約束されているわけではない

つまり、長い時間と多額の費用をかけて取得しても「見返り」がない場合があるということです。特に「管理職や給料アップが約束されているわけではない」についてですが、「うちの病院のレベルではそこまで立派な資格は不要です」と考える医療機関も存在し、そういう医療機関では4つの資格を持っていても待遇や処遇が有利になることはありません。

◆専門看護師とは

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専門看護師の資格は、5年以上の実践経験看護系大学院での修士課程修了2条件をクリアした看護師が、専門看護師認定審査に合格して取得できます。

専門看護師の役割と分野

専門看護師には次の6つの役割が求められています。

実践:複雑で困難な課題を抱えている患者や家族に対し、どのような看護が必要かを判断して、看護を実践します。

相談:患者・家族に対し、専門知識を活かしたアドバイスを行い、解決を図ります。

調整:病院での治療から在宅治療に行こうする際に、医師、看護師、訪問看護ステーション、ケアマネージャーに働きかけて調整し、連携を進めます。

倫理調整:倫理的問題が生じやすい治療において、患者・家族の思いを尊重した医療が行えるよう、医師や看護師に働きかけます。

教育:専門知識を活用し、看護師教育を行い、看護の質を向上させます。

研究:日々の看護を研究し、その成果を実践に移し、看護の質を向上させます。

専門看護師は次の13の看護分野に分かれています。

1.がん 2.慢性疾患 3.感染症 4.精神 5.老人 6.在宅 7.急性・重症患者 8.母性 9.地域 10.小児 11.家族支援 12.遺伝 13.災害

1人の看護師が複数の専門分野を選択することはまれで、1つの分野に絞るのが一般的です。ですので、専門看護師を目指す人は、いまから自分がどの分野を極めたいのかを考えながら仕事に取り組むとよいでしょう。

ちなみに、12の遺伝看護・13の災害看護は新ジャンルで、201712月にスタートする見込みです。専門看護師を目指す人にとって、非常に興味深いテーマだと思うので、詳細を紹介します。

遺伝看護

遺伝看護の対象となる患者へのケアでは、患者の遺伝的課題を見極めた診断や予防、治療が行われます。遺伝看護分野の専門看護師は、こうした特徴を理解した上で、患者の意思決定のための支援やQOL向上を目指します。

そして、遺伝関連の病気の治療は生涯続くことから、看護師もその患者と「一生の付き合い」になるかもしれません。それだけにとどまりません。遺伝は「次の生」にも続くことなので、世代を超えることもあります。

従来の医療体制とは異なる「ゲノム医療」のための体制を築く必要があり、遺伝看護の専門看護師もその重大業務に関与できます。これは国家プロジェクトでもあるので、その「やりがい」はとてつもなく大きいと言えるでしょう。

災害看護

災害看護は、「自然災害大国」日本ならではの専門分野といえます。被災地での医療は、災害発生時から10年以上続くことが想定されます。さらに、地震、台風、火災、竜巻など災害はそれぞれ異なる特性を持つため、必要な医療も異なってきます。そして、医療機関も被災対象となるので、人的・物的資源が限られた中で医療と看護を行わなければなりません。

災害看護の専門看護師は、そうした「ギリギリの状態」の中で看護を提供することが求められているのです。

また、傷や内臓疾患への対応だけでなく、被災地ではメンタルヘルスへの配慮も重要になります。心のケアも、災害看護専門看護師の大きな業務になります。そのほか、多職種連携に加えて、復興を指揮する行政とのやりとりも業務に加わります。

資料

・「専門看護師とは」(日本看護協会)

・「自然災害の多い国、日本」(一般財団法人国土技術研究センター)

◆認定看護師とは

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医療の高度化と専門分化は、一種の医療問題となっています。高度化も専門分化も「進化」には違いないので「良いこと」なのですが、あまりに高度化、専門分化しすぎて、弊害が起きているとの指摘もあります。

例えば日本経済新聞は「臓器別の専門分化が進み、専門外の病気や複数の病気を持つ高齢者の増加に対応できない弊害が目立ってきた」と指摘しています。

こうした事態に対応するのが、認定看護師です。

認定看護師の資格を取得するには5年以上の実践経験615時間以上の認定看護師教育を修了2条件をクリアした看護師が、認定看護師認定審査に合格する必要があります。

認定看護師の役割と分野

先ほど解説した専門看護師には6つの役割がありましたが、認定看護師の役割は次の3つです。

1.専門的な治療や看護が必要な患者・家族に、専門知識に基づいた看護を提供する
2.他の看護師の手本になり指導する
3.看護の現場で他の看護師の相談に乗り、改善策を導き出す支援をする

認定看護師の看護分野は21あります。

① 感染管理、② 糖尿病、③ 乳がん、④ 皮膚・排泄ケア、⑤ 認知症、⑥ 小児救急、⑦ 緩和ケア、⑧ 摂食・嚥下障害、⑨ 慢性心不全、⑩ がん化学療法、⑪ 脳卒中リハビリテーション、⑫ 慢性呼吸器疾患、⑬ 集中ケア、⑭ 訪問看護、⑮ 透析、⑯ 救急、⑰ 手術、⑱ がん放射線療法、⑲ がん性疼痛、⑳ 新生児集中ケア、㉑ 不妊症

特徴的なのは、高齢者看護の分野が多いことです。④⑤⑦⑧⑭はそのものずばり高齢者向けですが、それ以外でも、①は肺炎も含みますし、②⑨⑫⑮⑲の対象となる患者の多くは高齢者です。

認定看護師を目指す方が気になるのは、615時間以上の認定看護師教育ではないでしょうか。単純計算で、16時間の学習でも100日以上必要となるわけで、その期間、職場を離れなければなりません。

つまりこの資格の取得には、学習のハードルに加えて、職場の理解を得るというハードルも存在するのです。

どのような勉強をするのか、例として⑲がん性疼痛のカリキュラムを見てみましょう。

がん性疼痛認定看護師カリキュラムの目的
1. 水準の高い看護を実践する能力を育成する
2. 他の看護職に指導・相談ができる能力を育成する
3. がん性疼痛患者の身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな状態を総合的に判断し、ケアの計画、実施ができる

がん性疼痛認定看護師に期待される能力
1. 使用する薬剤と薬理作用について理解して、使用と効果の評価ができる
2. 患者・家族のセルフケア能力を高め、生活の質を向上させる
3. 患者・家族の権利擁護、自己決定の尊重
4. 病院の組織と医療サービスの理解、多職種との協働を図る
5. 看護の実践を通して役割モデルを示し、他の看護職の指導・相談ができる

専門性を高めるとともに、一般の看護師の見本、手本、指導者になることを目指していることが分かります。

資料

・「あらゆる症状の患者を診療・診断する総合医に存在感」(日本経済新聞2012.11.16)

・「認定看護師とは」(日本看護協会)

◆認定看護管理者とは

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認定看護管理者の資格を取得する最大の目的は病院の管理者や介護老人保健施設(老健)の管理者に必要な知識を身に付けること、となっています。

日本看護協会は「管理者」という言葉を使っていますが、より具体的には病院の副院長や看護部長や老健の副施設長を目指す人向けの資格といえます。病院の院長も老健の施設長も、原則、医師しか就任できないので、副院長と副施設長は看護職の頂点といえます。

認定看護管理者の資格を取得するには5年以上の実践経験510時間以上の認定看護管理者教育の修了、または、大学院で看護管理の単位を取得して修士号の取得認定看護管理者認定審査の合格という3つの壁をクリアしなければなりません。

認定看護管理者の役割

認定看護管理者の役割は4つ示されています。

1.保健・医療・福祉の「政策」「組織管理」「経営」を身に付けて、サービス向上策の検討とその実行
2.看護師の教育体制と人材育成の確立
3.ワークライフバランスの推進
4.医療事故の防止、安全管理の推進

この役割の中で、看護師が最も苦手とするのは「政策」と「経営」ではないでしょうか。そしてこの観点は、専門看護師にも、認定看護師にも登場しません。

しかし、病院の副院長や老健の副施設長レベルになると、政府や厚生労働省の動向に敏感にならなければなりません。また、診療報酬や介護報酬といった「おカネ」についてもシビアな感覚を持ち合わせないといけません。

当然のことながら、「510時間以上の認定看護管理者教育」でも「政策」と「経営」についてはかなりの時間が割かれています。

「保健医療福祉政策論」は30時間あります。国内の政策だけでなく「WHOの活動とヘルスケア政策」や「世界の医療・看護の動向」など、他国との比較論も展開されています。

同じく30時間の「保険医療福祉組織論」では「マーケティング」が出てきます。マーケティングは、医療を離れた一般的な経済学分野でも一大テーマになっています。さらに「ヘルスケアサービスのビジネスの動き」といったテーマもあり、ビジネス感覚を養う講義が展開されます。

そして「経営管理論」は60時間もあります。カリキュラム全体が510時間以上ですので、その1割以上を使って「経営」を学ばされるのです。

経営管理論の中には「経済学が追及するもの」「医療施設の経済的問題」などがあり、ほとんど「日本経済新聞の世界」のようです。

さらに「看護の生産性」や「原価の基礎的概念」というテーマもあります。つまり「1人のスタッフがいくら稼ぐのか」や「コスト意識を高めよう」といった内容にまで踏み込むのです。

従来の看護部長の役割は、看護業務全般の責任者でした。しかし、認定看護管理者の資格者には、看護業務全般の責任に加え、経営責任も求められるということです。

資料

・「認定看護管理者とは」(日本看護協会)

・「認定看護管理者カリキュラム基準(サードレベル)」(日本看護協会)

◆特定行為看護師とは

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特定行為看護師は上の3つの資格と異なり、厚生労働省が直接管轄しています。

これは在宅医療の推進を図るために設立された制度で、① 医師または歯科医師の判断を待たずに、② 手順書により、③ 一定の診療の補助を行う、看護師のことをいいます。

そして、①②③のアクションのことを「④ 特定行為」と呼んでいます。

①②③④は重要キーワードですので、詳しく解説します。

判断と指示は法律上厳格に区別されている

まず①ですが、看護師であればこの内容が持つ重大性は十分理解できると思います。そして厚生労働省はかなり踏み込んだなという印象を持つはずです。なぜなら保健師助産師看護師法において「第三十七条 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をし、その他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない」とあるからです。

看護師の看護業務は、すべて「医師または歯科医師の指示下にある」という意味です。

では、「①医師または歯科医師の判断を待たずに④特定行為」を行うことが、この条文に違反するかというと、そうではありません。

ポイントは判断指示という2つの単語の使い分けです。

つまり、「特定行為看護師は、医師の判断を待たずに特定行為を行ってもよい」のですが、「特定行為看護師であっても、医師の指示を待たずに特定行為を行ってはだめ」ということです。

臨床の現場では「医師の判断」も「医師の指示」もほぼ同じ意味ですが、法律上は厳格に区別されているのです。

特定行為とは

その次に「③一定の診療の補助」すなわち「④特定行為」について説明します。厚生労働省は、特定行為を厳密に定めています。少し長いのですが、重要な部分ですので表を添付しておきます(末尾参照)。

特定行為看護師になると、これだけの看護業務を、医師の判断を待たずに行えるのです。これはかなり「看護師の裁量が広がった」といえます。

特定行為看護師になるには医師の手順書が必要

では、特定行為看護師になるには、どのような研修や試験を受けなければならないのでしょうか。これが「専門看護師、認定看護師、認定看護管理者」と明確に異なる点なのですが、特定行為看護師になるには、研修を受ける必要も試験に合格する必要もありません。

一般の看護師が行うことができます。

しかも、看護師に特定行為をさせる病院などの医療機関の開設者は、「看護師が研修を受ける機会を確保するよう努める」だけでよく、特定行為をする看護師も、「能力開発と能力向上に努める」だけでよいのです。

これを法律用語で努力規定といい、「できればやってほしいのですが、やったかどうかを厚生労働省の職員がチェックすることはありません」という意味になります。

それでは特定行為看護師は、看護師免許を持っていれば誰でも行えるのかというと、そうではありません。それが②の手順書です。

看護師に特定行為をさせるには、医師が作成する手順書が必要で、そこには次のことが記載されていなければなりません。

・看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲
・診療補助の内容
・対象となる患者
・特定行為を行うときの確認すべき事項
・医師または歯科医師との連絡体制
・特定行為を行ったとの医師または歯科医師への報告の方法

ポイントは病状の範囲です。つまり、手順書を作成した医師の想定の範囲内の病状であれば、特定行為看護師は医師の判断を待たずに看護を継続できますが、想定の範囲外の病状にまで進んでしまったら、看護を中断し医師の指示または判断を待たなければなりません。

これが「特定行為看護師の裁量の限界」となります。

資料

・「特定行為に係る看護師の研修制度」(厚生労働省)

・「保健師助産師看護師法」

・「特定行為に係る看護師の研修制度に関するQ&A」(厚生労働省)

◆おわりに

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日本の医療費は天文学的な金額にまで膨らみ、医療保険制度自体を揺るがしかねない状況にまで追い込まれています。「看護師の上の資格」は、こうした「おカネの問題」と無関係ではないのです。

医療費の拡大要因のひとつに人件費の拡大があり、厚生労働省は人件費カットに力を入れています。「もし看護師が医者の仕事の一部を担ってくれたら、医師不足が少しでも解消するのではないか」ということです。医師の医療行為に対する診療報酬は、看護師の看護業務に対する診療報酬より、格段に高いからです。医師の給料が看護師の給料より高いのはそのためです。

また、医師1人を育成するコストと、看護師1人を育成するコストも、格段に違います。日本医師会などによりますと、1人の医師を養成するのに1億円かかると言われています。日本の大学において、ほかの学部の新設が比較的簡単なのに、医学部の新設はとても難しいのはそのためもあります。

こうしたコストのからみから見ても、看護師の上の資格は、社会的な要請であることが分かると思います。

資料

「声明、国家戦略特区による医学部新設に反対します」(日本医師会など)

◆末尾資料: 特定行為の種類

・経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 侵襲的陽圧換気の設定の変更
・非侵襲的陽圧換気の設定の変更
・人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
・人工呼吸器からの離脱
・気管カニューレの交換
・一時的ペースメーカの操作及び管理
・一時的ペースメーカリードの抜去
・経皮的心肺補助装置の操作及び管理
・大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
・心嚢ドレーンの抜去
・低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更
・胸腔ドレーンの抜去
・腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む。)
・胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
・膀胱ろうカテーテルの交換
中心静脈カテーテルの抜去
末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
創傷に対する陰圧閉鎖療法
創部ドレーンの抜去
直接動脈穿刺法による採血
橈骨動脈ラインの確保
急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理
持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
脱水症状に対する輸液による補正
感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
インスリンの投与量の調整
硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整
持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整
持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
抗けいれん剤の臨時の投与
抗精神病薬の臨時の投与
抗不安薬の臨時の投与
抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整