現役の看護学生が新卒新人訪問看護師にインタビューをする企画です。

 「経験不問」を採用条件に掲げるケアプロ訪問看護ステーション。そんなケアプロ初の新卒訪問看護師となった小瀬文彰さんに、新卒で訪問看護の業界に飛び込んだ理由や、訪問看護の魅力など、様々な視点でお話をしていただきました。

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小瀬文彰さん

2009年、慶応義塾大学看護医療学部入学。
在学中の2012年、ケアプロ株式会社予防医療事業部のインターンに参画。インターンを始めて数ヶ月後に在宅医療事業が立ち上がる。
2013年、慶応義塾大学看護医療学部卒業。ケアプロ株式会社の在宅医療事業部に勤務し、ケアプロ初の新卒訪問看護師となる。
2014年から、きらきら訪問ナース研究会の運営メンバー(聖路加国際大学との共同事業)を務める。
2015年、自ら全国新卒訪問看護師の会を設立し、代表となる。
2015年4月、訪問看護師3年目として、後輩の新卒訪問看護師のプリセプター(新卒看護師のプリセプティーの教育・指導を行う担当の看護師)を務める。

◆本当に新卒に訪問看護師はできないのか?という問いに答えを出したい

ー 新卒で訪問看護師を目指した理由をお願いします。

大学在学中に、ケアプロの予防医療事業部で1年間インターンをしていました。

最初は訪問看護師に関心はなかったんです。「医療看護×ビジネス」に興味を持っていたので、経営的なことや、行き届かない人に医療を届けることに関心がありました。

インターンを始めて、数ヶ月後にケアプロの在宅医療事業部が立ち上がりました。在宅医療事業部の働いている隣でインターンをしながら、訪問看護の分野でどんな新しい試みを行っているのだろう、と関心を持っていました。そんな中、「24時間365日の訪問看護体制」の重要性を語る当時の在宅医療事業部の事業部長を目にしていました。

大学4年で同級生と進路の話をした時、110人のうち20人くらいは訪問看護をやりたいという同期の学生がいました。けっこう多いですよね。インターン中に訪問看護師が足りていないことを知ったので、訪問看護をやりたがっている20人くらいの同級生全員に「訪問看護やらないの?」と聞きました。しかし、全員、「新卒で訪問看護師にはならない」という返事でした。理由は、なんとなくできないというイメージでした。「そもそも新卒でやれるなんて聞いたことない」、「とりあえず病院でしょ」、「病院にいる先輩が無理だと言った」などと言っていました。一方で、24時間365日の訪問看護を継続的に実現するには、若い人材の確保はとても大切だと思います。休日や夜間問わず、勤務し在宅療養を支援するために若い人材の活用は急務です。

学生は訪問看護をやりたいと思っており、訪問看護業界は若い人材が欲しい。お互いにニーズがあるにも関わらず、マッチしないということに、課題意識を持ちました。このような中で、新卒で訪問看護師になる人が出てくるかを待とうと、考えたこともありました。しかし、それは他人任せであり、自分が新卒で訪問看護師として活躍できるか当時はわからなかったけど、やってみて、「新卒でも訪問看護師はできるんだ」とアピールしたい、無理なら無理だと証明したいと決意し、新卒で訪問看護師にチャレンジしました。

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◆新卒訪問看護師なんてやめなさいよ、と言われたこともある

ー 新卒で訪問看護師となることに周囲から反対はなかったですか。

新卒でケアプロに入ってから、看護大学のほとんど面識のない先生に怒られたことがありました。「新卒訪問看護師なんてやめなさいよ、新卒で相手が急変したらどうするの?」と言われたのです。

入職してすぐの私は、その発言になにも言い返すこともできず、ただただ悔しい想いで帰ったのを覚えています。一年目のはじめの頃は、看護技術ができないことに不安があり、やはり病院で働き直したほうがいいのではと何度も思ったこともありました。訪問看護では、「生活の視点」が大事と先輩たちに言われるものの、よくわからない日々が続きました。本当に色々なことが上手くいかなくて、新卒に訪問看護師が無理だと言われる理由もよくわかり、落ち込んだ時期もありましたね。

ー どのように課題を克服していったのですか。

当時は、自分なりに看護技術の手順書を作ったり、振り返りのシートを作ったりしていました。気づいたら、学生時代の実習で学校から頂いた実習様式と同じようなものができていたんです。学生時代の実習は新卒者の思考過程にそって様式がつくられているのだとその時初めてと思いました。

また、入社してから半年経って、入社後の自分を振り返ってみました。そこで気づいたのは、一ヶ月目に課題に感じることは、二ヶ月目で課題に感じなくなるということ。一ヶ月目の課題が二ヶ月目の成功体験になる。できたからこそ次の課題が見えてくる。見えている範囲が広がるんです。

最初は、技術ができないことばかり考えていましたが、次第に、ご利用者様の全身状態やフィジカルアセスメントをした中で、どう負担のないケアをするのかまで考えることができるようになりました。そして、1年目が終わるころには、技術のことだけでなく、ご利用者様が生活をしていくための看護全体について考えられるようになっていました。

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◆新卒で訪問看護師として活躍できる

ー 実際に新卒で訪問看護師をやってみて、新卒で訪問看護ができると思いますか。

新卒で訪問看護師ができるかできないかという点を考えると、最初のうちは確かにできないと思います。ただ、新卒で訪問看護師になってはいけないのかというと、それは違うと思います。

新卒は、最初から一人で訪問するわけではないので、先輩やご利用者様から教わりながら、初めはできないながらも一年経った時に成長していけました。自分を振り返った時に成長できているんだ、と思えたんです。だから、就業環境、教育環境などの環境が整っていれば、新卒訪問看護師として成長し、看護師として就業し、活躍することはできると思いますね。

ー 訪問看護は病院の看護とはまた違うのでしょうか。

病院で経験があったら訪問看護がすぐにできるのかと言われると、それもちょっと違うのではないかと思いますね。

入職して1年が経とうとしていたときに、訪問看護師には訪問看護師の特徴的な視点があることに気がつきました。それが生活の視点ということです。新卒1年目の時に、薬を飲んでくれないご利用者様がいました。なんで薬を飲まないのか聞いてみたんです。「薬って食後じゃないとダメなんでしょ?食事をしたりしなかったり、まちまちだから飲まないの。」と言われました。このご利用者様は、食欲がないときは食事をしないので、服薬しないようにしていたのです。薬を目のつくところに配薬だけではうまく行かず、ご利用者様がどのような生活を送っていて、薬をどう捉えているのかをしっかり聞くことが大切だと学びました。

ご利用者様の思いをたくさん聞き、ご利用者様の望む生活を作り上げていくことを、一緒にさせてもらっています。訪問看護でも、ご利用者様と一緒に作り上げていくことをしていかないといけないと思います。

ー 訪問看護をしていて嬉しかったのはどんな時ですか。

本当に色々なケースがある中で、ご利用者様が望んだ生活を送れているように感じられたときは嬉しいですね。ご利用者様の生活をより良くするための課題が多い中で、一人一人のご利用者様ごとに生活が違うので、訪問看護は難しくも面白さがあります。

以前、前立腺癌を患いながらも、末期の状態ではないご利用者様を訪問していました。彼は、食事を吐いてしまい、食べたり飲んだりできない状態でした。体力が低下していて、トイレも行けなくてベッドの上で失禁していました。この状態で訪問看護に依頼がきたのです。疾患の治療が必要なわけではなかったので、病院に入院する対象にはなりませんでした。奧さんに迷惑をかけるからと本人は意気消沈していました。歯磨き粉の匂いすらも嘔吐の元になってしまうほどでした。本人の体調に合わせながら、陰部洗浄や清拭をしていると、徐々に、次は、シャワーしようかなと希望をされるようになりました。シャワーを浴びてみると、お腹が空いたとおっしゃるようになったんです。だんだん食欲も出てきて、食べれるようになって、お風呂の希望もされるようになりました。そのご利用者様は、ついに買い物に行けるくらいまでの回復をされたんです。

訪問看護師が黒子のように生活を少しずつ整え、ご利用者様が望む生活スタイルを作ることで、ご利用者様が生き生きと暮らせるようになったのを見ると、訪問看護をしていて本当に嬉しく思えました。

ー 1日の仕事の流れを伺いたいです。

基本的には9時出社、18時退社です。9時半に訪問を開始して、午前は2件ほど訪問します。お昼にカンファをすることもあります。お昼休みがあって、13時半から午後は3件ほど訪問します。17時には事務所に戻って、デスクワークをします。ご利用者様の状況を共有したりするためにケアマネージャーさんに連絡することもありますね。3~4年目で退院調整や契約をやるようにもなりました。2年目から緊急携帯の持ち回りがスタートしています。

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◆訪問看護にマニュアルはない。同じケースもない

ー もうすぐ5年目の訪問看護師ということですが、今の課題はどんなことですか。

そうですね、大きく2つほど課題があります。

1つ目は、4年以上訪問看護をやっても、まだまだ看護実践で至らないところが多いと思うことです。一人一人生活や身体状態が違うので、自分の看護実践に反省のないことはないです。ご利用者様の生活から学ぶことは多いですね。色々な工夫があることは、一年目からずっとですが、尽きません。

2つ目は、訪問看護にマニュアルはないし、多種多様なケースに、多くの関係者と協同しながら支援を行う点です。訪問看護師は、サービス介入時のサービスの契約から、退院調整カンファレンスの参加、サービス担当者会議の出席、連携している他職種の方々との連携調整、ご利用者さまのご自宅での看護実践など全部のことを行います。

看護実践の中には、ALSのご利用者様の気管切開をするのかしないかの意思決定への支援や、癌の末期において、本人と家族の希望のギャップがある場合の調整など、複雑なケースもあります。マニュアルはなく、全く同じご利用者様はいないんです。あらゆる人と協働し、訪問看護師として、介入していくことが必要です。

ー ケアプロの良さはどんなところですか。

一人ひとりの訪問看護師の看護観が多様なところです。訪問看護には看護師の価値観も影響します。ケアプロには、オペ看やICUや救急など急性期病棟出身の看護師、ヘルパーの経験がある看護師など色々な看護師がいるので、それぞれの強みを活かすことができます。若い人が多いこともあって、不安を共有し、当たり前のように相談できる環境がありますね。

ケアプロは、チームで訪問看護をし、シェアをして看護していく風土があります。若い人を育てることが当たり前の風土も良いところです。

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◆訪問看護師が家での生活は無理だと言ってしまったら、ご利用者様は施設に行くことになるかもしれない

ー 目標とする訪問看護師像はありますか。

どんなご利用者様の希望でも、なんとか叶えられないか考える姿勢を持ち続けたいです。

訪問看護師を数年間やっていると、色々なご利用者様のケースに出会います。足の踏み場がないくらい荷物があるお宅に行くこともあります。かと思えば、家庭環境がすごく整った家もあります。独居でターミナル期の方もいれば、人工呼吸器を常に使っている方もいます。そして、家族が協力的な家庭、家族と本人の意思が違う家庭などもあります。

でも、どんなご利用者様でも「家では暮らせないな。」と感じるご利用者様はあんまりいないんです。ご家族が自宅でご利用者様を見送りたいと言われたら、家では無理というご利用者様は、私の中ではいません。

認知症で畳が尿だらけのお宅もありますけど、本人としては家がいいとおっしゃることもあります。「暮らせている」という基準が医療的な基準だと、確かに入院すべきかもしれません。でも、そこで医療的な基準で考えて進めるのか、本人の生活の基準で考えるのか。ここを突き詰めると、家族とご利用者様のニーズが合わない場合を除けば、家で無理ということはないと思います。

訪問看護師としての経験年数が上がるほどに、複雑なご利用者様のケースに多く関わらせていただきますが、それぞれのケースで、どう家での生活を送れるのかをまず考えたいんです。訪問看護師が、家での生活は無理だと言ってしまったら、ご利用者様は施設に入所せざるを得ない場合もあります。

だから、今後というよりは引き続きの目標ですが、そういったご利用者様の希望をどう実現するかを考え続けたいです。ここが訪問看護の醍醐味でもあります。

ー 最後に、訪問看護未経験の方へのメッセージをお願いします。

新卒訪問看護師は前例も少なく、教育体制が整っているところは多くはないので、訪問看護は好きだけど、怖くてやめてしまう人も少なくありません。だから、自ら学んで着実に成長していく姿勢と、自分とともに育ってくれる事業所選びが大切だと思います。

訪問看護に興味がある人は「暮らしを支えたい」「利用者に寄り添いたい」と思っている人たちだと思います。そういう方が訪問看護の世界に入ると、すごくいい看護が思います。訪問看護は一人で幾分できるようになってからじゃないと行けないイメージがありますが、実際はご利用者様が教えてくれ、事業所の訪問看護の先輩方が教えてくれます。ぜひ、みなさまが訪問看護の扉を叩いてくださるのを楽しみにしています。

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◆ケアプロさんでは見学者応募中!

インタビューさせて頂いたケアプロさんでは、訪問看護ステーション見学会を行っています。

新卒で訪問看護に挑戦したい方、また訪問看護未経験者など、ぜひお気軽に申し込んでみて下さいね。

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